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 ←エピソード:バッカスの指輪 →エピソード:純黒の染料を求めて(前)
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「小説」
チェルノボグセカンドシーズン

エピソード:マーメイド×ハピネス

 ←エピソード:バッカスの指輪 →エピソード:純黒の染料を求めて(前)
◆登場人物紹介


◆メルシー/湖守見習い/魚種・人魚/67歳
【外見】全体としては魚要素が上半身にもある人魚。下半身は完全に魚な為、陸上での行動は苦手。腰の辺りからカジキのような鰭が生えている。また耳も鰭になっている。普段は鱗で隠している胸部には、肋骨に沿う形でエラがある。
【人物】スクラクの娘でありリネオクン、バグラス、ガザニカ、ラムの姉。またフモトトの異母姉妹。おっとりとした温厚な性格で誰にも優しい好人物。次期賢者として考えると下手をするとスクラクより人望がある。


◆スクラク/湖守の賢者/水棲種・スキュラ/566歳
【外見】肌の色は真っ白。髪は紫色の触手状になっている。下半身は白い、十本の烏賊の触手となっている。
【人物】メルシー、リネオクン、バグラス、ガザニカ、ラムの母親。怜悧で聡明な人物。水晶砂漠のオアシス・チェルノボグ唯一の水源を守っている為魔法的にも優れており、大賢者アドライアの信頼も篤い。


◆マロカ/本屋/特殊種・文喰(かつ生成)/21歳
【外見】外見的にはほとんど純粋種の人間と変わらない。短く切りそろえた濡鴉の髪の毛を持つ。額からは二本の、皮に包まれた角が生えており、これが唯一純粋種と違う部分になっている。
【人物】家族に近しい賢者以外には基本的につっけんどんな態度をとる。が、それは友達付き合いの仕方をよく知らないだけで、根はとてもいい子である。賢者の前では可愛い乙女。ものぐさな引きこもりだが、結構付き合いは良い。


◆リネオクン/薬屋/水棲種・クリオネお化け/44歳
【外見】触角付きの白いフードを目深に被ったような頭部を持つ。目がなく、口元でしか表情が分からない。胸の辺りまでは白いが、それから足に行くにつれて水色になって行く。クリオネの遺伝子の為、二本の足は触手に近い。胸元に赤い内臓器官が透けて見える。
【人物】スクラクの次女。メルシーの妹でバグラス、ガザニカ、ラムの姉。師である先代の薬屋コイカから教えを受けたこの集落唯一の科学者。冷静な人物で合理主義者。マロカ・クスフィスと並ぶ集落の若い知識人。


◆アドライア/大賢者/精霊種・ドリアード/?????歳
【外見】緑色の、先端に行くにつれて葉っぱに変じる特殊な髪の毛を持つ。肌の色は白に深い緑を薄く混ぜたような色合い。ドリアードであるため、体の随所から樹木が生えて局部を保護している。本体は自身の居城である白い大樹『白亞の塔』。
【人物】大賢者という名の便利屋。チェルノボグが出来た当時からずっと大賢者として集落を見守って来た。住民全員にとっての母のような人物で、他の住民に出来ないことも多く出来る。長命故に謎の多い人物。




 水晶砂漠に、風が吹く。
「あまり芳しくないわね」
 羊皮紙を持ったまま、湖守の賢者スクラクは娘であり湖守見習いである人魚メルシーにそう告げた。試験結果の発表である。今日、メルシーはスクラクに魔導言語の試験を課された。魔道言語は古代から伝わっている千古不変の言語体系である。これを修めないと湖守の賢者位に必要な魔法が使えない。しかし、もう六十七歳にもなり、元服前から湖守見習いであったメルシーはどうも魔導言語が苦手であった。読むのはそれなりに出来るのだが、書くことが下手である。
「やっぱり、追試でしょうか」
 親子とはいえ今は賢者とその弟子の間柄、メルシーは極めて礼儀正しく、かつ怖れを含んだ口調でそう言った。その言葉にスクラクは思案しているらしい。メルシーに魔導言語の試験を課したのはこれが一切ではない。なのにメルシーの成績はかなり緩やかにしか成長しない。さてどうしたものかとその師は途方にくれたのである。やがて、『普段から馴染んでないからそんなに書けないのかしら』と思い当たって、言う。
「メルシー、魔導言語で日記をつけてみたらどう? 勿論辞書を使いながらで構わないわ。日が経つにつれて、辞書もいらなくなるでしょうけど」
 スクラクの提案にメルシーはあんまり乗り気がしなかった。どうも魔導言語というものに積極的になれない。それでも賢者の言うことに刃向える立場ではないし、自分が賢者位を継ぐ以上避けては通れぬ道である。「やってみます……」と幽かに言った。それでその心情を察したスクラクは手に付けていた指輪をメルシーに渡した。メルシーの方では意図が理解出来ず首を傾げる。
「いい装丁の日記帳なら少しはやる気も出るでしょう。その指輪をあげるから、マロカの所に行って日記帳を買って来なさい。その後はいつも通り仕事をこなすこと。私ももう仕事に戻るわ」
 言い置いて、湖守の賢者はその一室を去った。彼女は多忙なのである。
 残されたメルシーは指輪を観察していた。大きなルビーが瞳のようにぎらぎら光る絢爛な指輪であった。これなら日記帳一冊くらいは買えるかな……と思って、マロカの本屋、即ち図書館遺跡に日記帳なんてものがあるのか不安になる。図書館遺跡は名前の通り古代のチェルノボグで図書館として機能していた場所である。メルシーだって図書館が何かくらいは知っている。貸し出しの為の本の中に日記帳なんてないんじゃないかな……と思ったのだが、スクラクは確かに『マロカの所』と言った。賢者はチェルノボグの遺跡の内部を知り尽くしているので、スクラクがそう言ったのであれば問題なかろうと思ってメルシーは自宅のある湖畔遺跡を出て、マロカの図書館遺跡を目指してぴょんぴょん跳ねて行った。メルシーの下半身は完全に魚のそれなので、陸上での行動は苦手である。それでも六十年間湖と陸地を行き来する生活を送っているので、さして支障はない。
 そして図書館遺跡に着いたメルシーはぴょんぴょんと二階にある玄関から中に入って行き、ぴょんぴょんと階段を降りて一階のレファレンスカウンターに辿り着いた。そこではマロカが布団屋のドリメアから買った毛布にくるまって眠っている。もう昼過ぎだというのに、この不精な本屋と来たら今日起床してすらいないのである。
「マロカちゃん、マロカちゃん」
 メルシーはカウンターの中に入ってマロカの肩を揺さぶったのだが、マロカは起きない。「マロカちゃん!」と大声で呼んでも「うぅうん……」と唸る程度で起きてくれない。そこでメルシーは、周囲の本をどけて、掌に一握りの水を生み出し、マロカの顔面にぶっかけた。冷水が顔に当たったショックだろう。マロカはがばっと起き上がった。
「何!? ……ああ、メルシーか。おどかさないでよ、もう」
 生成の文喰は着ていた部屋着の袖で顔を拭いつつ言う。
「それで、なんの用?」
 二人の年齢は四十年以上開きがあるのだが、それでもマロカはつんけんとした態度を崩さない。彼女が敬語になるのは酋長と四賢者、それ以外だと八百年を生きた酒場の九尾くらいだろうか。メルシーもそれは分かっているので、特に気分を害すこともなく答える。
「えっとね、これをお代に日記帳を買いたいんだけど、日記帳ってここにあるかな?」
 メルシーの問いにマロカは首を傾げた。
「何、日記つけるの?」
「お母さまが『魔導言語の勉強の為に魔導言語で日記をつけなさい』って。今日試験あったんだけどあんまりいい結果じゃなくてね。それで日記ってことになったの」
「ふうん……見習いっていっても大したことないわね」
「だって私たちはマロカちゃんみたいに直接文章を食べられないし、クスフィスみたいに頭もよくないもの。地道にやるしかないんだよ」
 マロカは文喰という、文章を喰らって生きる種族である。それはたとえ外国語でも古代語でも魔導言語でも問題なく読めてしまうということである。今名前が出たクスフィスにしたって幼い頃に大賢者アドライアから様々な言語を叩きこまれたお蔭で(マロカほど万能ではないにせよ)相当に色々な言語が読める。メルシーや他の見習い職なんかは公用語だけでいっぱいいっぱいだというのに。この辺が知識人と準知識人の差である。
「ふうん……まあいいんじゃない。あんたが湖守を継承してくれた方が私としても都合がいいし、それでバグラスに差をつけちゃいなさいよ」
 バグラスというのはメルシーの妹の一人であり、湖守の賢者位を狙っている人物である。そしてマロカはバグラスと仲が悪い。だからメルシーは困ったような顔をした。
「まあ、バグちゃんのことは一先ず置いといて、日記帳ってあるの?」
「日記帳、って言っていいのか知らないけど、白紙の本であれば結構あるわよ。ついて来て。水はまき散らさないでよね」
 そう言ってマロカはランタンを持って地下閉架書庫に向かった。ランタンの中には光源石という酋長フィトリアが生み出す魔法の石が入っている。メルシーは人魚故、体からわずかに、発汗に近い感じで水が出る。マロカが言っているのはそれを本にかけるなということである。メルシーはぴょんぴょん飛ぶのをやめて、尾びれの辺りで蛇行する移動法に切り替えた。この方が水が飛ばなくて済むのだ。
「この辺ね」
 そしてマロカが指し示したのは、地下三階の一画だった。
「どうして白紙の本なんかが置いてあるの?」
 その一冊に手を伸ばしてぱらぱらめくりつつ、メルシーの問い。
「知らないわよ。ずっと昔からあったらしいけど……」
「ふーん……マロカちゃんはこの辺の本、見てみた?」
「結構」
「じゃ、いい感じの装丁の本教えてくれないかな」
「いいけど……思い出すからちょっと待って」
 そうしてマロカはランタンで白紙本の背表紙を照らしながら本棚を渉猟し始めた。やがて、「あ、これなんかいいんじゃない?」と言って一冊の、結構な厚さのある本をメルシーに差し出した。タイトルの記述はない。それは魚の鰭や鱗が上手く描かれた美しい装丁の本だった。
「人魚には似合ってるでしょ」
「そうだねー。うん、これにする」
 メルシーとしてもこの本は気に入る所があった。水棲種である自分に何か通じるものがある。これなら憂鬱な魔導言語の勉強もはかどるのではないか、そう思えた。
「じゃ、お代ちょうだい」
「はい」
 そして渡したルビーの指輪を、マロカはランタンで照らして観察していた。
「レキカ様の作なんでしょうけど……日記帳一冊の対価にしては高すぎるわね。暫く本か情報が欲しければこれの分に入れてあげるわ」
「ほんと? ありがとー」
「まあ、適当な日記帳一冊でこれってのも気が引けるしね」
 スクラクがメルシーにやった指輪は宝紬の賢者レキカの佳作であった。それ一つで魔導書でも買えてしまうくらいの価値はある。だからマロカは暫くの間メルシーの求める本やそこにある情報を無料にしてやったのである。
「じゃ、今日はありがとね」
「別にいいわよ、仕事だし」
「そっか。じゃあね、マロカちゃん」
 こうして二人は別れた。




『結構いい買い物が出来たかも』
 そう思いながらメルシーは湖の外周をぐるっと回る湖畔遺跡の中にある自室に本を運び込んだ。今日という日はまだ残っている。日記は一先ず置いておいて、仕事に戻らなければならない。近頃のメルシーの仕事は湖の生態系管理の補助である。湖に生息している生物の現況を調べ、記録し、スクラクに預ける。これがなかなか面倒な仕事であった。何せこの集落唯一の湖はとんでもなく底が深く、その底まで『水鏡の魔法』を以って観察せねばならない。それでも湖守近縁の仕事では楽しい方である。色々な魚や水棲動物を観察するのはメルシーの日々の慰みとなっている。これが衛生管理なんかになると相当に面倒な上に責任も重大になる。いずれはそれも自分の仕事になるのだと思うと人魚は憂鬱を禁じ得ない。それくらいに湖守という仕事はチェルノボグというオアシスにあって重要で、責任重大なものなのである。
 そんな日々の営みを経て、一日が終わる。メルシーは自室に蓄えている香草魚の干物を十四尾も食べて、さあ寝ようと思って日記のことを思い出した。まだあんまり乗り気ではなかったが、スクラクの命である以上書かねばならぬ。しかし書かねばならぬと思うのが書くことを妨げる。それでもなんとか日記帳を開けたのはメルシーが勤勉な証拠である。
 日記帳の一頁目を開いた時、メルシーは訝しみの視線をそれにくれることになった。魔道言語で何事か書いてあるのである。印字されたものではなく、誰かの手跡である。そこにはこんなことが書いてあった。
『まだ見ぬ誰かへ
 初めまして。私の名前はハピネスといいます。この本に書きこみをすればお友達が出来るとお父様にお聞きしました。この船上国家フォルネウスから遠く離れた誰かさん、もしよろしければ私の友達になってください。お返事、お待ちしています。
 ハピネスより』
 これにメルシーは首を傾げた。誰かの悪戯だろうか。といっても、マロカの所でさっきまで眠っていたものである。誰かが書きこんだとしたらマロカしかいないが、あいつはそういう性格ではない。となると誰だろう……と思って十数年前に死んだマロカの父親の顔が脳裏をよぎる。マロカの父は娘と違って茶目っ気のある人で、確かにこういう悪戯をすることもあるだろうと思えた。それを十数年以上の時を経て自分が発見したのだと思うと少しおかしい気持ちになる。
 くすりと笑いながら、メルシーは最初の日記を書いた。
『今日、魔導言語の試験がありました。お母さまから私に。点数はダメでした。日記をつけなさいと言われました。本屋さんでこの本を買いました。素敵な装丁です。気に入っています。
 今日は、他に、いつもの通り湖の生物の観察をしました。浅い所にいる大きな提灯鯰が、どれくらい大きくなるか、楽しみです。実はこれが私の密かな楽しみになっています。湖の管理の仕事では、一番楽しいものです。
明日はどんなことが起きるか、楽しみです』
読み返して、『我ながら下手くそな文章だなあ』と嘆息する。とはいえそこは能天気なチェルノボグの住民、『まだまだこれからだよね』と自己完結して、眠りに就いた。
翌朝、起きたメルシーは吃驚仰天することになった。
日記帳が光っていたのである。
何事かと思って見ていると、じきに光はやんだ。恐る恐るといった体でその頁をめくってみる。すると、そこに最初に書いてあったのと同じ筆跡で、追加の文章が書かれているではないか。本当に何事だろうと思いつつ、メルシーはその文章を読んでみた。
『世界のどこかにいるあなたへ
 もしかすると、という前置きは必要でしょう。あなたはこの本をただの白紙の日記帳と思っているのではないでしょうか。実際の所、この本は遠くの人と会話する為に作られた『伝書のグリモワール』というものなのです。だからここ、船上国家フォルネウスにいながらにして私は世界のどこかにいるあなたと会話することが出来るのです。魔道言語の試験があったということは、あなたの周囲には魔法に詳しい人がいるのですよね。その方に確かめて貰えばすぐに分かると思います。
 もしよろしければ、ですが、私の文通相手になってはくれないでしょうか。といっても、何者か分からないと不安でしょうから、自己紹介をしますね。先にも書きましたが、私の名前はハピネスといいます。フルネームはハピネス・ジル・ヴァレンタイン。船上国家フォルネウスの出身で、今もそこに住んでいます。フォルネウスは船の上にある国家です。特殊な領地だから、聞いたことくらいはあるかも知れませんね。私はそこの魔導学者の家系に生まれたもので、幼い頃から魔導言語を学んで生きて来たので、あなたがよければそれを教えて差し上げることも可能かも知れません。この手記を魔導言語で書いたのも、魔導言語が千古不変の世界共通語であるからです。
 ただ、私は今病床にあります。十四歳の時に体を壊して、こちら二年間、十六歳になった今でもベッドからほとんど降りられません。病名も分からないのですが、お医者様は外国の病気が交易の時に国内に入り込んだのだろうと仰います。それで私はフォルネウスの一区画に隔離されていて、気を紛らわす為にお父様がこの伝書のグリモワールを下さったのです。
 出来ることなら、あなたのことを教えてください。どんな所に住んでいるのか、どんなお仕事をしているのか……訊きたいことは尽きません。どうか、お返事を下さい。
 ハピネスより』
 これを読んだメルシーの脳内には混乱が押し寄せた。伝書のグリモワールなどというものは聞いたこともないが、しかしスクラクとマロカにしか話していないこの日記に書きこみをするものはチェルノボグにはいないだろう。マロカは悪戯をするタチではないし、スクラクはこんな迂遠な方法で魔導言語を教えようとはしない。誰かの悪戯という線が消えると、自然にこの日記帳が魔導書だということは自明のこととなる。それでもメルシーには確信が持てなかったが。それに、中に書かれたことを信じると、相手は船上国家フォルネウスに住まう十六歳の少女ということになる。フォルネウスという国のことは幼い頃に古代史を習った時に出て来た『七十二堕天国連盟』の一つであると、メルシーはかろうじて覚えていた。しかし、そこからどういう方法でここまで文字を書けたのかが分からない。そして、十六歳の少女がこれだけ達者に魔導言語を使えるのだという考えは、六十七年生きていてあんなにつたない文章しか書けないメルシーにとって酷くショックなことであった。
 一先ずお母さまに相談しよう……そう思って、メルシーは朝の日課も済まさずに母スクラクの居室を訪ねた。湖の奥底にある湖守の賢者の住まい『水天宮』ではスクラクが朝飯の骨魚の丸焼きを喰っている所であった。
「あら、何か用?」
 いきなり訪ねて来た娘に母は疑問符を浮かべた。
「ええっと、お母さまに言われた通り昨日マロカちゃんの所で日記帳を買ったんですけど……ちょっと……いや、かなり不思議なことがあって……何か、全然思い当たることのない書きこみが起きたらされてたんです。これなんですけど……」
 メルシーは日記帳をスクラクに差し出し、ハピネスと名乗る人物の書きこみを指さした。スクラクはメルシーの手から日記帳を受け取り、その書きこみを読む。何か考えていたようであったが、やがて何かを「思い出した」と言った。
「なんだか、分かるんですか?」
「ええ。このハピネスという子が書いているように、これは確かに伝書のグリモワールよ。と言っても、私も昔アドライアから聞いて知ってるだけで、実物を見るのは初めてだけど」
 やはり賢者は頼りがいがある。この集落にある『未知』を『既知』に変える最も手っ取り早い手段はそれを賢者に見せることなのである。
「伝書のグリモワール……ここに書かれている通りのものなんですか?」
「そうね。詳しくいうと、伝書のグリモワールは二冊一対になっているものなの。そして対応関係にある二冊にそれぞれ書かれたことは相手側のグリモワールにも反映されるという魔法がかけられているのよ。古代末期にちょっとお洒落な連絡魔法って感じで流行したものらしいわ。三冊以上対応のものもあって、アドライアはよくそれがあれば賢者同士の連携ももっと取りやすくなるのに……って愚痴ってたわね」
 余談を挟みつつ、スクラクはメルシーに伝書のグリモワールを返した。
「まあ丁度いいわ。ここに書かれていることが事実なら貴女より魔導言語が達者な十六歳と文通が出来るわけだから。日記より気合が入るでしょう?」
「それは、まあ、お返事を書かなきゃとは思いますけど……」
「いいじゃない、日記が文通に変わったって。フォルネウスなんて私も文献でしか知らないけど。これから毎晩返事を書いてあげなさい。外国文化も知れて一石二鳥かも知れないし」
 母なる賢者にこう言われてしまってはメルシーに選択権などあろう筈もない。自分のつたない文章を顔も知らない誰かに見せ続けるのか……という躊躇いはあったが、それでも「はい」と頷いて水天宮を辞す。
こうして、どういう返事を出そう……と思いながら、メルシーは一日の仕事に取りかかって行ったのである。




 そして夜。メルシーは相当に迷いながら筆をとった。
『ハピネス・ジル・ヴァレンタインさん
 初めまして。私の名前はメルシーと言います。姓はありません。この国に姓というものがないのです。
 貴女が思った通りです。私はこれを白紙の本と思っていました。最初の書きこみは昔の知り合いの悪戯だと思いました。今日、お母さまに見せたら、貴女のいうことが本当だと教えられました。チェルノボグ、あ、この国の名前です。ここでは魔法に詳しい人は四人の賢者様くらいです。幸福なことに、私のお母さまはそのうちの一人。湖を守る賢者です。水晶砂漠というものを聞いたことはあるでしょうか。その中にある一つのオアシス国家。それがチェルノボグです。
 もう少し詳しく、私のことを話しますね。歳は六十七歳です。昔、お母さまから聞きました。チェルノボグの年齢の感覚は外国に比べると特殊だと。二十歳で元服、これは親元を離れることです。それをします。そして五十歳で一人前の大人になったことを祝われます。ですから、六十七歳と言っても、チェルノボグでは若者です。何せ、お母さまは五百六十六歳です。ハピネスさんは十六歳。年齢差は十くらい私が上とでも思って頂ければ。そして、もしかすると意外かも知れませんが、人魚です。チェルノボグに、純粋種の人間はいません。私は湖の賢者の見習い、つまり、後継者をしています。色々なことを学び、お母さまのお手伝いをするお仕事です。
 魔導言語でこれだけの長文を書くのに慣れていなくて、疲れたようです。こんな下手くそな文章でよければ、友達になりましょう。船上国家フォルネウスのこと、とても知りたいです。チェルノボグは外国との交流がないので。お返事、待ってます。
 メルシーより』
 どうにもつたない文章だなあと思いながら、メルシーは自分の書いた文章を見直した。それで一つのミスに気づく。文字をぎっしり書きすぎていて修正を入れるスペースがないのだ。明日からは気をつけよう……そう思って眠りに落ちた。
 翌朝、目覚めると計ったかのような正確さで伝書が光っていた。今度はどんなことが書いてあるだろう……と、わくわくしながらメルシーはその頁をめくった。すると、本の中から紙に包まれた何かが飛び出した。なんだろうと思ってハピネスの文章に目を落とす。
『親愛なるメルシーへ
 お友達になれたこと、とても嬉しく思います。宛名はフルネームでなく、『ハピネス』だけでいいですよ。それはそうと、伝書のグリモワールにこんな機能があるのはご存知なかったでしょう? 生物は無理ですが、物質であれば本に挟むことで相手の方に送ることが出来るのです。私も今日お父様から聞いて初めて知ったのですけどね。これはお近づきのしるしです。フォルネウス名産のブルーチョコレート。ミントの香りがしてとっても美味しいですよ。
 さて、見事に私の推測は当たったようです。貴女が伝書のグリモワールのことを知らなかったことだけは。それ以外は非常に驚くことばかりで、私が予想していたものとは全然違うものでした。今現在この船上国家フォルネウスはアルビオン(といって分かるでしょうか)に向けて大西洋を渡っています。船の上の国家ですから、あちこちに行けるんです。けれど、まさか旧欧州水晶砂漠に存在するオアシスにお住まいだとは思いませんでした。チェルノボグ、という名前もどこかで聞いたかも知れない……というくらいにはよく分からない場所です。水晶砂漠にある国家は大凡そうですが。それ以上に、メルシーが六十七歳! ということに驚きを隠せません。チェルノボグはかなり特殊な国家なのですね。お母さまが五百歳を超えているということは、長命種か不老種だということですね。更にいえば、チェルノボグというオアシス国家は人魚の国だと。そんな所で湖を守る仕事というのは大変でしょう。けど、素晴らしいくらいに誇り高い仕事だと思います。
 おっと、書こうと思っていたことを忘れかけていました。いけないいけない。フォルネウスのことです。船上国家フォルネウスは古代末期に生まれた国家の一つで、名前の通り、また先に話した通り、船そのものが国になっているものです。砂漠の住民に船と言って分かるかどうか分かりませんが、船の表面に街が広がり、内部には船上国家を成立させる為の様々な魔法・科学機関が存在しています。他の多くの七十二堕天国と同じように大きさはさほどありません。また、この世界のほとんどの国でそうであるように、フォルネウスにおいても『古代』が一体何万年前なのかは議論の的です。それでもフォルネウスには電力機関をはじめとした古代の遺産がかなり多く残っている状態です。この辺の事情はちょっとここでは説明し切れません。
 フォルネウスは船の上という都合上、あまり一次産業が盛んではありません。ただ、外国との交易が盛んで、そこで得られたものを加工するのがこの国の主な産業です。規則正しく整然と整えられた街並みはとても美しく、緑化も適度に行われていて工業国の割には非常に綺麗な外観を持っています。所々にある高台に登れば海が見えて、非常に開放的な所です。
 もっともっと書きたいことはあるのですが、お父様がもう寝なさいとうるさいので、今日はここまで。またお返事くださいね。
 ハピネスより』
 これを読んでメルシーは『そんなことも出来るんだ』と感心してしまった。そして包み紙を開くとそこには名前通りの青い物体があった。チェルノボグという集落ではあまりチョコレートというものが生産されないので、メルシーは興味津々といった体でそれを口に含んだ。甘さの中に透き通るようなミントの香りが広がる。こんな美味しいものがあったのかと人魚は驚きと喜びでいっぱいになった。物質を送れるのであれば何かお返しをしなければならないだろうなあ……なんてことも考えた。とはいえすぐに適当なものは思い浮かばない。いずれ何か送ろう……と思ってハピネスが一つ思い違いをしていることに気づく。チェルノボグは人魚の国ではない。人魚などメルシー一人しかいないのだ。異人種の国であるということを説明せねばなるまいと思って、朝の日課にとりかかる。ハピネスにどんな風に話そうか、自分の文章力でどこまで伝えられるか、そんなことを考えながら過ぎる一日は楽しかった。




 夜、伝書のグリモワールを開いて、考え考え、返事をしたためる。
『親愛なるハピネスへ
 私の書いたことがハピネスにとって意外であるのと同じく、私にとってもハピネスの書いたことは驚きのものです。海や船というものがあるのは知っていますが、チェルノボグでは見ることが出来ません。だから、ちょっと羨ましいです。
 さて、一つ誤解されているようなので訂正します。チェルノボグは人魚の国ではありません。様々な異人種の国です。人魚は私一人だけ。お母さまはスキュレーです。国王たる酋長様はドラゴン、大賢者アドライア様はドリアード、この本を売ってくれた本屋さんのマロカちゃんはフミクイです。色々な人種がいます。ですが、純粋種はいません。十数年前にはマロカちゃんのお父さんが純粋種だったのですが、今はいません。お父さん、で思い当たったのですが、チェルノボグには男性もいません。女の子しか生まれて来ないのです。それに、女の子同士で子どもを作る技術があります。ハピネスにはお父さまがいますね? 男の人が日常にいる社会というのはどんなものなのでしょうか。
 もう少し詳しく、チェルノボグのことを話しますね。
 チェルノボグという国が水晶砂漠にあるのは先の通りです。酋長様と四人の賢者様、そして一人の巫女様がこの集落を統治しています。神様の名前は『チェルノボグ』。巫女様がその御声を聞く務めをしています。酋長様が行政を行い、大賢者様が国の運営を纏めています。大賢者のアドライア様はこの集落が出来てからずっと生きていて、もう一万歳以上なのは間違いありません。オアシスの重要な湖の賢者は私のお母さま、スクラク様が務めています。あと二つの賢者の位はタカラツムギのレキカ様、墓守のラブラ様が、それぞれ務めています。タカラツムギというのは、この地の宝石細工を務めて、装飾品に魔法を籠める地位のことです。
 他の住民もみんなそれぞれに仕事を持っています。ただ、チェルノボグという国は非常に小さいです。広さの意味でもそうです。ですが、住民の数がとても少ないのです。三十人ちょっとと、国を名乗っていいのか怪しいくらい。そして、チェルノボグで『広さ』を持っているのは、遺跡です。遺跡は地下に長く続いています。ほとんどが埋まっていますが、ここ数百年で幾らか開けてきました。最近も、新しい遺跡が見つかったそうです。そんな集落ですから、住民はみんな顔見知り。その全員が女性です。マロカちゃんのお父さんは外国から来た旅人で、生粋のチェルノボグ人ではありませんでした。
 だから、男の人がいる社会がどんなか気になります。教えて貰えたら嬉しいな。お返事、待ってます。
 メルシーより
 追伸、チョコのお返しはちょこっと待っていてくださいね』
 これでいいかな……などと思いながらメルシーは日記帳を閉じた。改めて自分の住んでいる国を紹介するのは難しいものなのだということを学んだ。チェルノボグという集落は集落にして国。とはいえ外交は全然ない。空を飛べるものでなければ劣悪な水晶砂漠を超えて他国に向かうことは出来ない。今現在、先の郵便屋でありアドライアの番いでもある『風神』ヴァルルーンが外交官の意味も籠めて集落の外にいるが、それにしたって数百年に一度の人選である。まして船上国家などメルシーには想像もつかない。でもそれはハピネスもそうだろうと思って、返事に期待を膨らませつつ、寝る。
 翌朝、伝書のグリモワールを見るとしっかり返事が書いてあった。読む。
『親愛なるメルシーへ
 凄い! 女性だけの国なんておとぎ話でしか聞いたことがありません。それに色々な異人種の国だったのですね。人魚の国とは私の早とちりだったようです。その大賢者のアドライア様に訊けばもしかすると『古代がいつであるのか』ということも分かるのかも知れませんね。非常に古くからある国なのだと、それだけで分かりました。小さくともそれだけの歴史があれば立派な国家だと思いますよ。チェルノボグの宝石細工、見てみたいです。
 さて、メルシーは男性がいる社会のことを知りたいのですね? とはいえ、私にとっては非常に当たり前のことなので、上手く説明出来るか分かりません。チェルノボグの生殖は多分外界に比べるとかなり特殊なものだと思います。女性同士で子どもが出来る技術というのは知っていますが、それが普通に使われている国は滅多にないと、何年か前に保健の教科書で読みました。そういう具合なので、男性がいる国は当然異性相手に生殖をします。フォルネウスはリベラルな国家なので同性婚も認められていますが、そういう人たちは子どもを作らず、養子を貰います。恋愛対象というのは基本的に異性です。私の両親も当然男と女。
 そういう風に恋愛の価値観が違うように、他の点でも様々な違いがあると思います。例えば、男性のいる社会で女性が身ごもった場合、出産の補助の為に仕事を休んだり、病院で特別に扱われたりします。この辺はチェルノボグだとどうなっているのでしょう? 気になります。また、社会の仕組みの上でも男女の違いというものはあります。古い考えだと非難する人もいますが、男性が仕事をしてお金を稼いで、女性が家事育児の為に家にいる、という構図が最も分かりやすいものでしょう。実際の所、フォルネウスでは工場に務めるのも他の仕事をするのも夫婦が一緒になってやる、というケースが多いです。それでも力仕事は男性、頭脳労働は女性、という具合に分かれていることがほとんどなので、やっぱり性差による仕事の区別はありますね。
 これくらいでどのくらい分かって貰えるかはちょっと怪しいですが、こんな具合です。もしよければ、チェルノボグの生殖や異人種について教えて下さい。もっとも、私も今回『自分が当たり前だと思っていること』を人に伝えることの難しさを知ったので、可能な範囲で構いません。お返事、待ってます。
 ハピネスより』
 これを読んだメルシーはハッと思いついて自室にある、古道具屋クスフィスから押し売りされた箪笥の中身を思い出した。結構前に宝紬の賢者レキカが気まぐれでメルシーにくれた一つのブローチ。銘は『蒼きレオガルズル』という、サファイアを大胆にあしらった結構なものである。ただ、メルシーの好みの上からするとこれはちょっと派手すぎて箪笥の肥やしにしていたのだ。それを友情の証として贈ろう、そう思って朝の日課を開始する。酋長の城で火を貰いに行くのだ。そしていつもの仕事に戻って行く。その中に、遠くにいる友人への返事を考える楽しみが混じって行く幸福に、メルシーは気づいた。




 仕事を終えて食事を終えると返事を書く時間である。今度はこちらがチェルノボグの特殊な生殖技術を説明せねばならない。どういう風に書こう……と思いながら筆を執る。
『親愛なるハピネスへ
 ハピネスのお返事を読んで分かりました。チェルノボグがどんなに特殊であるか。この地での生殖は、雄蕊を使います。これは、つまり、ええと、言いづらいのですが、取り外しの出来るペニスです。これを片方がつけて、相手と交わります。その交わりは、女性同士である以外は、普通のそれです。そして、この国の交わりでは、受ける方が事前に薬を飲みます。卵子を排出する薬。それで受精するのです。受精した卵子は、孵卵器に入れられます。そこでこの地に残っている、ほとんど、唯一の、過去の大規模技術遺産、『遺伝子改竄装置』を使います。すると受精卵は、親の好みの異人種になって、卵になって、生まれて来ます。お腹の中に子どもを宿すのではなく、卵から、私たちチェルノボグの民は生まれるのです。これは多分、かなり珍しいことなのではないでしょうか。何せ、色々な本を見ても、この方法が載っているものはないくらいなのですから。
 先にも書いた通り、チェルノボグは異人種の国です。遺伝子改竄技術の為、どんな人種でも生み出せます。一番多いのは獣種と虫種と精霊種。これらは同数です。他に私のような水棲種、墓守のラブラ様のような爬虫種(ラブラ様はラミアです)、幻想種に植物種、鳥種、そして酋長様の一族にのみ伝わる龍種と、色々な種が混在する国家です。純粋種を生まないのは理由があって、仮に不老にしても、通常の純粋種では、このオアシスの環境に耐えがたいのです。マロカちゃん(彼女は特殊種)のお父さんは純粋種で、相当に苦労していたようです。旅人だったので、賢者様たちの庇護が篤かったのも、長生きした原因です。
 チェルノボグの種と生殖についてはこのくらいかな。最後に、チョコレートのお返しを兼ねて、友情の証として、一つのブローチを贈ります。これはタカラツムギの賢者レキカ様が下さったものの一つです。名前があります。『蒼きレオガルズル』。いきなり宝石のブローチなんて驚くかも知れないけれど、これくらいの宝石はチェルノボグでは結構普通に出回っているので気にせず受け取ってください。またお返事、待ってます。
 メルシーより』
 読み返して、表現はともかく、内容に不足がないことを確かめたメルシーは、『蒼きレオガルズル』を本に挟んで、寝た。
 そして翌朝。メルシーは最早確実な楽しみとなったハピネスの返事を開いてみた。今回はどうやらそんなに書くことがなかったらしい。返事は今までよりも短かった。
『親愛なるメルシーへ
 なんというか、その、えっと……自分から訊いたことなのに、改めて教えて貰うと恥ずかしいですね。私、そういうことは知識でしか知らなくて……恋人がいたこともないくらいですし。メルシーも、やっぱり、そういうことをしたいと考えているので……いえ、やっぱり訊かないことにします。友達のそういう部分を訊くのはちょっと失礼ですし!
 それはそうと、本当にメルシーは私をびっくりさせる天才ですね! こんな立派な宝石細工を気前よくくれるなんて! 嬉しいですけど、お人よしがすぎますよ。誰かに騙されたりしないように気を付けてくださいね。お父さまに頼んで宝石商の方に鑑定して頂いたのですけど、なんと三千万ソロもの値段になるそうです。通貨単位が違うから分かりづらいかな。新築庭付きの一軒家が買えるくらいの値段です。船の上にある所為で家の数が限定されているフォルネウスでこれは凄いことですよ。でも、メルシーがくれた大切なものだから、大事にしまっておくことにします。
『蒼きレオガルズル』、よく観察すると宝石の奥にライオンかな? が彫られているのですね。それも、覗き込む角度で違う姿勢に見える! どれだけ見ていても全然飽きません。レキカ様というお人は凄い人なのですね。出来ることなら、私もチェルノボグに行ってみたい。けれど、叶わぬ願いですね。
 今日はあんまり具合がよくないみたい。もっとお話ししたいけど、今日はここまでですね。また、お返事、下さいね。
 ハピネスより』
 これを読んだメルシーは随分心配した。文通の履歴を読み返すと確かにハピネスは病床にあるらしい。もしかして悪化したりしたのかしら……なんてことも考えた。短いつきあいではあるのだが、メルシーは何かハピネスに対して非常に波長が合う相手であるような気持ちを抱いていた。出来ることならば自分もハピネスに会ってみたい。しかし、物理的にほとんど不可能であることも分かっていた。メルシーはその職掌上チェルノボグの外に出ることはどんな事情があっても出来ない。ハピネスの方から来るにしても旧ヨーロッパの水晶砂漠のどこか、としか分からないチェルノボグに来いというのは酷な話である。それにハピネスの病も気がかりであった。少しでも自分がその病床に花を添えて上げられれば……心優しい人魚はそんなことを考えながら一日の仕事に励んだ。何かハピネスに捧げるような面白いことを探しながら。するとその日、丁度妹のリネオクンとガザニカから面白い話を聞けた。それをハピネスに伝えようと思いながら、百貫鴨を夕食に喰う。
 そして一日は終わる。




『親愛なるハピネスへ
 聞いてくださいよ、ハピネス。チェルノボグという集落は、湖を中心にして八方位に遺跡が綺麗に並んでいるんです。でも、そのうち北西の方角にだけ遺跡がなかったんです。それが最近になって新しい遺跡があるのだと分かったのです。大賢者様がずっと隠してたみたい。発掘の現場には私の妹二人も立ち会うんですって。でも妹もお母さまも酷くて、私につい最近までそれを教えてくれなかったんです。『訊かれなかったから』なんて二十三歳下の妹が言うんです! 四十一歳下の妹は申し訳なさそうにしていましたけど。なんでも、新しく発掘される遺跡は美術館遺跡というそうです。チェルノボグで美術を鑑賞出来るのは賢者様の家の中だけですけど、どんな美術が伝わっているか、密かに楽しみにしています。発掘されたら、どんな所か、ハピネスにも教えますね。上手く伝えられるか分かりませんけど。
 私も一度、ハピネスと会いたいです。でも、チェルノボグが世界地図のどこにあるか、全然、分かりません。旅人は数百年に一度しか来ません。彼らも、チェルノボグという場所を目指して来たわけではないようです。水晶砂漠を流離ううちに辿り着いたという具合で……今現在、『風神』ヴァルルーン様という方が集落の外にいます。もしもチェルノボグの場所が分かるとしたら、あの方次第です。外から、チェルノボグの位置を測る……それも、あの方のお仕事の一つの筈なので。本来は外交大使です。でも、いつ帰って来るか分からないし……もどかしいです。会いたいのに、会えないなんて。
 ごめんなさい、なんだか暗い感じになってしまいました。でも、いつか会えると信じていれば、必ず会えるとも思うんです。だから、希望を持って行きましょう。お返事、待ってます。
 メルシーより』
 ぱたん、と伝書のグリモワールを閉じる。ハピネスはどんな返事をくれるだろうか……毛布にくるまり、それを思う。それがメルシーの日々の楽しみになっていた。今の生活に不満があるわけではないが、古い文献でしか知らない遠い国家に住む友人と話をするのは、彼女にとって新鮮なことばかりで非常に心惹かれるものであったのだ。
 だが、ハピネスの返事には残酷が含まれていた。文字自体がハピネスの異変を知らせるほどに、歪み始めていたのである。
『親愛なるメルシーへ
 妹さんがいたのですね。新遺跡、どうなるのか私も気になります。でも、それが済むまでに私が生きていられるかどうか、それすら怪しくなってきました。二年前から徐々に体が動かなくなっていたのですが、最近は更に進行したようです。下半身はもう完全に動きません。まるで樹木にでもなったかのように、全然、意思の通りに動かせないのです。最近では上半身も徐々に動かなくなってきました。指先も徐々に浸蝕されているようで、お気づきの通り文字も段々に書けなくなって来ました。医師の方は何も出来ないと匙を投げたようです。なんだか、医学の心得がないので詳しくは分からないのですが、血液にも異常があるようです。そのうちに文通も出来なくなるでしょう。チェルノボグに行くことなど、夢のまた夢です。それでも、メルシー、私のわがままを聞いてください。貴女とは、私が動かなくなるその日まで、文通を続けたい……私が死んだら、お父様にその旨を書いていただくよう言ってあります。ああ、どうせ死ぬなら、貴女に会ってから死にたかった……』
 手記はそこで途切れている。どうやら力尽きてしまったらしい。それでもまだ生きているだろうと思って、メルシーは何か自分に出来ることはないかを考え出した。とはいえ、湖守に必要な医学をまだ初歩段階までしか学んでいない彼女が、遠くに離れた友人を助けることは不可能であると、聡明な脳細胞は早々に判断してしまった。そして、一度専門家の意見を仰ごうと、薬屋を営んでいる妹のリネオクンの元を訪ねる。
「リネちゃーん、いるー?」
 メルシーが湖畔遺跡にあるリネオクンの家を訪ねると、丁度火種石を貰って来た所らしいリネオクンが火を焚いていた。
「どうしたね、メル姉」
「ちょっと相談があって……実は最近ね、魔導書を使って外国のお友達とお話ししてるの」
「魔導書? どういうことだい」
「ええっとね……」
 そしてメルシーはここに至るまでの経緯をリネオクンに話して聞かせた。
「それで、チェルノボグの医療技術でハピネスを治せないかなって思ってね、リネちゃんは私よりそういうのに詳しいだろうから、訊きに来たんだ」
「ふむ……半身不随に血液異常……それだけだとちょっと判断しかねるな。……ああ、でもどうだろう。アドライア様にも相談した方がいいんじゃないか。というか、その方が早いね」
「というと?」
「何せ外国の話だからね……チェルノボグの歴史の中にある病気かどうかも分からない。そうなるとこの集落で唯一『外』を知ってるアドライア様に訊かなければ決定的なことは分からないだろうというのが一つ。次に、どういう病気か断定するにはカルテの写しがいるが、フォルネウス語で書かれたそれを読むのはマロカにでも頼まなければならないわけで……アドライア様なら恐らくそんな迂遠なことをせずとも読めるだろうというのが一つ。そしてアドライア様に治せない病気であればチェルノボグのどんな技術を以ってしても治せない。つまり、今メル姉が出来る最善の行動は、ハピネスさんにカルテの写しを貰って、アドライア様に事情を話すことだね」
 言われてみると確かにリネオクンの言う通りなのである。この集落で最も医学に詳しいのは大賢者アドライアであり、人文学にも優れる彼女ならばフォルネウス語も恐らく読め、そして彼女に治せないのであれば彼女に医学を学んだこの集落の数少ない医療従事者にも治せない。そうなるとメルシーに出来ることはリネオクンの提案通りである。
「そっか……分かった。かけあってみる。ありがとね、リネちゃん」
「いや、構わないよ、このくらい」
「そっか。ありがとね」
 ハピネスへの心配とその病気への不安、治療への希望がないまぜになった複雑な気持ちを抱えて、メルシーは一日を始めた。しかし、どうにもハピネスのことが気にかかって仕事も学問も手につかない。その日は外国語の勉強時間があったが、あんまりメルシーが上の空なのを見て母なるスクラクは心配したらしい。「何かあったの?」と訊いてきた。
「いえ、その、例の文通相手の子の病気が酷くなって来たみたいで、それが心配で……」
「ふうん……それじゃ、今日はここまでにするわ」
「え、いいんですか?」
「その状態じゃ頭に入るものも入らないわ。リネオクンに相談して、もうどうすればいいのかは分かっているのでしょう? なら、それをして、不安を解消なさい」
 どうやらスクラクはメルシーの僅かな発言から彼女がとった行動を正確にシミュレートしたらしい。教本を閉じて「しっかりやるのよ」と言い置いて去った。残されたメルシーは開かれた教科書を前に、不甲斐ない思いでいっぱいになってしまった。湖守見習いとしての仕事も満足にこなせない自分が、本当にあの偉大なる母の跡を継げるのか不安になったのである。それでも、スクラクの優しさが嬉しかったので、部屋に戻って伝書を開く。




『親愛なるハピネスへ
 貴女の病気がどのようなものか、それは分かりません。けれど、チェルノボグには一万年を超える年月進歩し続けて来た医学者でもある大賢者アドライア様がいらっしゃいます。もしも貴女がカルテの写しを送ってくれれば、どんな病気かも、治療法も、分かるかも知れません。確実なことが言えないのは本当に申し訳ないのですが、私にも、友達として何かさせて下さい。カルテさえ貰えれば、大賢者アドライア様は非常に博識なお方です、きっと治療法を見つけてくださいます。もしも過去のいかなる病気とも違うとしても、新薬を生み出すくらいのことは出来るお方なので、これを読んだらただちにカルテの写しを送ってください。何もせずに、貴女が病苦に沈んで行くのをただ見ているだけなんて、あんまり情けない。お願いします、私を、チェルノボグを、頼ってください。お返事、待ってます。
 メルシーより』
 そう書いたメルシーはすぐに伝書を閉じた。そしてハピネスの返事を待つ。もしかすると、カルテを見てもどうにもならない類のものであるかも知れない。だが、絶望するのは出来ることを総てやってからだと、力強く心を決める。時計などない湖畔遺跡の一室の時が過ぎていく。食事をする気にもならない。眠る気にも、また。いつしか日が暮れ暗くなる。心まで暗くならぬよう、光源石を壁に備えた時、それとは別の光がぱぁっと灯った。伝書のグリモワールである。開くと、随分な厚さのある書類が飛び出した。メルシーには読めない言語がずらっと並んでいる。これはと思ってハピネスの文章を読む。字は今朝より更に歪んでいる。
『親愛なるメルシーへ
 ありがとう。無理だとは思うけど、一応カルテを送ります。どうやら植物に犯されたよう。体から木々や花の臭いがするの。青臭い。お医者様も完全に見たことのない奇病だと仰います。アドライア様に、賭けてみるしかないみたい。それで無理なら、私はじきに死ぬでしょう。『幸せな一生を送れますように』とお母さまがつけてくれた『ハピネス』という名前なのに、私、全然ハッピーじゃない。ちょっと、自分でもおかしくて笑ってしまうほど不幸です。でも、メルシー、貴女という友を持てたことは、病気の不運を掻き消してくれるくらいに幸福なことです。
 ありがとう。
 ハピネスより』
 これを見たメルシーは思わず涙ぐんだ。自分にとってハピネスがかけがえのない友であるのと同じく、ハピネスにとっての自分もそうなのだと思うと感涙を禁じ得ない。だが、涙はハピネスが快癒した時の為にとっておくことにして、カルテの写しと伝書のグリモワールを持って湖の西岸にある大賢者アドライアの居城白亞の塔に向かう。
 アドライアの私室や執務室はこの集落最大の樹木のあちこちに点在している上に、ドリアードであるアドライアでなければ通れないような所にある。為にアドライアに直接会うのは容易ではない。メルシーは白亞の塔の麓に着くと、呼び鈴代わりに機能する大きなベルを思い切り揺さぶった。すると、メルシーの背後の樹木の根が人の形に盛り上がり、大賢者アドライアがその姿を現した。
「スクラクから聞いてるわ。上手くカルテが手に入ったみたいね」
 優しいアルカイックスマイルで、アドライアはメルシーに手を差し伸べた。
「お母さまに……? なんにせよ助かります。これなんですけど……読めますか?」
「どれどれ……うん、私の知ってるフォルネウス語と同じだわ。本当に、古代の文明を色濃く残しているのね。船の上になんかあるからかしら」
 暢気に感慨深そうにアドライアは呟いた。メルシーは慌てふためいた様子で「それで、ハピネスの病気は……」と尋ねた。
「どうもこれを書いたお医者さんは知らないみたいだけど、この症状はトリフィド病ね。日記の記述もそうだけど、体が徐々に動かなくなって、更に進行すると体が植物に変わっていくという病。古代末期に生まれて、人類を衰退させるのに一役かった難病だけど……まあ任せなさい。治す手段はちゃんとあるから。少し待っていてね。薬石を生成して来るわ」
 そう言ってアドライアは白亞の塔を登って行った。メルシーの方ではついていけないので、不安げにそれを見送るしか出来ない。だが、大賢者が大丈夫と言っている以上大丈夫なのだろうという安心感は存在した。チェルノボグという集落に住んでいる住民は総てアドライアに対して絶大の信頼を置いている。勿論それはメルシーだってそうである。だから適当な所に腰を下ろして、祈りのように指を組んで待っていた。
 時計のないチェルノボグで時間を計るのは太陽と月の位置だけである。いい具合に月が天に昇る頃、アドライアは白亞の塔から降りて来た。小さなバスケットを持っている。中には飴のようなものが幾つも入っているようだった。
「薬石よ。一日に一個、飴のように舐めていれば段々に快癒していくようになってるわ。カルテを見た感じだと、私が知っているトリフィド病そのもののようだから、この薬で充分な筈よ。こんなに沢山は使わないと思うけど、用心の為にね。余ったらトリフィド病の対策に使うようにすればいいし。あ、それからこれ、トリフィド病についての学術的なことを羊皮紙に纏めておいたから、これも一緒に送ってくれる? トリフィド病って結構伝染力の強い病気なのよ。フォルネウスみたいな閉鎖的な環境で蔓延したら国家存亡の危機だから、念の為に、ね」
 そう言ってアドライアはウインクしてみせた。肉体が植物に変じる奇病に難なく薬を造れるのはアドライアが百世紀以上を生きた植物の化身ドリアードであるからだ。殊植物に関することで彼女以上の叡智を持ったものは世界でも他にないだろう。メルシーは心から感激し、「ありがとうございます!」と大きくお辞儀をして白亞の塔を辞した。そして自室に戻るとすぐに伝書のグリモワールを開く。




『親愛なるハピネスへ
 大賢者アドライア様にカルテを見せて相談しました。結果から言うと、治せるとのことです。その為の薬も造って頂けたので送りますね。
 アドライア様によると、ハピネスのかかっている病気はトリフィド病という、古代末期に人類衰退の一要因になったものだということです。体が徐々に動かなくなって、やがて植物になってしまうという怖ろしい病気。でも、送信する薬を一日に一つ、飴のように舐めていればいずれ快癒するそうです。多めに造ったとのことなので、余ったらトリフィド病の研究に役立てて下さい。それから、トリフィド病は伝染力の高い病気らしいので、フォルネウス内部で大規模感染が起きないように病気についてのことを記した書類も同封します。どうかこれでハピネスの病が恢復しますようにと、祈ります。
 早く元気になって、これからも文通を続けましょう。
 メルシーより』
 そうして、薬石と羊皮紙とを本に挟んで送る。これで後は薬が正常に効くことをただ願うばかりである。こればっかりはどうにもしようがないので、メルシーはひたすらこの地の神チェルノボグに祈りを捧げ続けた。普段であればとうに寝ている時間であるが、心配で心配でとても寝付けたものではない。やがて日が昇り、朝日が射す頃、伝書のグリモワールが光った。ハピネスからの返事である。恐る恐る、開いてみる。中に書かれた文字は、以前の震えたものではなく、それより以前の流麗なものであった。
『親愛なるメルシーへ
 ありがとう! 貴女のお蔭で、病気は急速に恢復に向かっています。まだ下半身は動かせないけど、それでも上半身への浸蝕は急停止したみたい。これだけ簡単にトリフィド病を治す薬を造り出せる大賢者様は一体どんな人なんでしょう。薬をお医者様に見せたら、『これはもうロストテクノロジーの域だ、奇跡の技術だ!』と大興奮。それでも上手くすれば同様の薬は造れるようで、非常に助かっています。話していなかった……というよりは、私もついさっき知ったのですが、フォルネウス国内では何件か同様の症状の人がいるようです。早速貰った薬を元にして治療を開始するようで、本当に、メルシー、貴女は救国の英雄です。私自身の状態も、体感だと以前よりずっといいの。これならいつか、貴女に会いにチェルノボグへ旅立つのも夢じゃないかも知れませんね。なんて、ふふ、気が早すぎるかしら。でも、チェルノボグに行く、それが私の人生の目標になりました。実は私、不老種だから根気強く行けばきっと辿り着けると思うの。
 貴女と、アドライア様のお蔭で、今日はとってもよく眠れそう。本当に、本当に、言葉では言い尽くせないくらいに、ありがとう、メルシー。これからも、ずっとこの文通は続けましょう。私の人生のハピネスはきっと、貴女と共にある。
 お返事、待ってます。
 ハピネスより
 追伸。メルシー、随分魔導言語が上手くなったんじゃないですか?』
 これに安心して、メルシーはぶっ倒れた。意識が溶暗に沈む。
 ……。
「あ、起きたね」
 ゆっくり目を開けると、目の前にリネオクンがいる。
「あれ……私、どうして……」
「いつまで経っても仕事に来ないから、母上が呼びに来たら倒れてたんだってことだよ。それで私が看病を申付けられた。まあ、寝不足と食事不足だから大したものじゃないね。芋粥を作っておいたから食べるといい。もう起きれるね」
 言われてメルシーは上体を起こした。少し眩暈がするが、問題はなさそうだった。
「私、どれくらい寝てた?」
「朝から今まで丸半日」
「そっか……ごめんね心配かけて」
「まあそれは母上に言うんだね。それじゃ、私はこれで失礼するよ」
「うん。ありがとう」
 そしてリネオクンを見送ったメルシーは、半径が二十五センチもある宝紬見習いザントレム作の土鍋一杯に詰まった芋粥をもそもそ喰い出した。チェルノボグでこういう料理の為の器具というのは希少だが、最近はザントレムが小遣い稼ぎに土鍋を売り歩いていて助かっている。芋粥は恐らくリネオクンが作ったのであろう。凄まじく不味い。芋が固すぎる。それでもなんとか平らげると活力が湧いて来る。ハピネスに返事を書く活力が。伝書を開いて、ペンを執る。
『親愛なるハピネスへ
 まずは病気が回復傾向にあるようで、本当によかった。私は大それたことはしてませんから、アドライア様に貴女の言葉を伝えておきます。あのお方がいなければ貴女を助けられなかったもの。とはいえまだ完治したわけじゃないんだから、しっかり療養して下さいね。これは、絶対の約束。だって貴女はいつか、このチェルノボグまで旅して来るんだもの。
 いつになるか、それは多分お互いに分からないけれど、私はずっとずっと待っています。立派な湖守になる為の勉強も頑張るから、ハピネスもどうかお大事に。
 ハピネスがあんまり心配で、ちょっぴり今日は寝不足です。明日からはゆっくりお返事書けるんじゃないかな。というわけで、いつか私たちが実際に顔を合わせるその日まで、この伝書の文通は続けて行きましょう。お返事、待ってます。
 メルシーより』
 そうして、微笑みながらメルシーは伝書のグリモワールを閉じた。この調子であればハピネスの病も心配なく治るだろう。ここに来てまさか彼女が不老種だとは思わなかったが、それならばいつかチェルノボグに来ることも、ハピネスの言う通り不可能ではあるまい。待ち人が出来ることは、人生に新たな歓びの火を灯すことであると、メルシーは知った。
 いつか二人が出会うその日まで、二人の文通は綿々と続いていくのだろう。
 チェルノボグは今日も平和である。










【エピソード:マーメイド×ハピネス《了》】
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