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「小説」
風合文吾

コンクリート

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 部屋の中にあるすべてのものにやるせなくなって外に出た。アパートの廊下は冷たいコンクリート。私の煙草の銘柄はケント。
 なんだかすべてがどうでもいいような気分になって、冬の冷気に冷やされたコンクリートの床に腰を下ろした。壁に背を預けると、尻と背中とが冷えた。そうして、冷たい風が体を冷やした。
 塾でバイトをしている。そのせいで衣服に煙草の臭いなどはつけてはいけないと上司から命令された。学校の教師だって煙草を吸っているのに。給与明細を渡されるたんびにありがとうございますと言っておじぎする。盗めばおじぎせずともいいのに。
 部屋の中で、暖かさに包まれながら煙草を吸える者は幸福である。コンクリートと北風の冷たさに包まれて煙草を吸う者は滑稽である。では、不幸なものは? 煙草の味を知らないやつだろう。
 思い通りに生きた奴は天国へ行ける。
 しかし、この世に天国へ行ける人間がどれくらいいるというのだろうか。私は天国へはいけない。そんな私はきっと他人から見たら随分好き勝手に生きているように見えるだろう。
 そんなことを思いながらケントを吹かしている。薬を二錠、キメた頭でものを考えることは出来ない。さっきまで降っていた雨に濡れた、一枚のちらしが目の前に落ちていた。一メートルもないだろう。そいつに一瞬シンパシーを感じて、すぐに錯覚だと思いなおした。
 一本吸い終えると足元の寒さが酷く感じられた。髪を切ったせいで頭も寒い。こんなに寒い思いをしているのは大体バイトのためであるのにどうして財布の中まで寒いのか。
 水が欲しくなった。
 煙草を吸った後は喉が渇く。冷蔵庫に水はまだ残っていたか。水道水は汚くて飲めない。ミネラルウォーターを買うようにしている。それでも、それは私が求めているきれいな水ではない。しかし、妥協しなければならなかった。
煙草をもみ消して立ち上がった。 コンクリートの床にすりつけるようにして立ちあがった脚に、痛みが走った。寒さは気にならなくなった。
 ただ、一杯の水が欲しかった。






後書き

これを書いたのは二〇一一年の二月ごろであるらしい。
どうにも記憶の糸をどれだけ手繰ってみてもしょっちゅう休職していたアルバイトがいつまで続いていたかを思い出せないのであるが、この頃はどうもしていたらしい。或いはバイトの記憶を頼りに書いたということもあるだろうが。
この当時、金沢に住んでいた。部屋の中はそれは酷い有様であったが、この頃はまだ金銭的に余裕があったのでフィギュアなんか飾っていたりもしたものである。やるせなくなったのは無常観を感じさせるその人形に対してである。
煙草の銘柄に関しては嘘をついているような気がする。ケントを特に吸っていた記憶は……否、ある。確かいつものブラックデビルを切らしていて、どういうわけか煙草屋も開いていなかったのでコンビニで買えるケントにしたのであった。ケントは叔父が愛飲している煙草である。一度吸わせて貰ったことがあった。あまり癖がなくて吸いやすい。今現在でも私はブラックデビルのココナッツミルクを愛飲しているが、もしもそれが面倒になったらケントにするつもりでいる。

煙草を覚えたのがいつだったか遂に失念したが、この時期は塾でバイトをしている所為で上司から『部屋で煙草を吸うな』ということを実に面倒になるほどに言われていた。結局この後バイトを辞めるに至るのだが、そのストレスの元は煙草にあったということも言えよう。つまり、喫煙者は迫害されるものであるのだ。
水の話はそのまま当時の私の状況を示していると言っていい。
私はかなりの肥満体故、飲み物にも気を使わなければすぐに血糖値や血圧がまずくなる。この時期はその予防にミネラルウォーターを飲んでいたらしい。水道水はこの時点では飲めなかった。というのも、風合の実家は井戸水をポンプで救い上げて水を得るので、カルキ臭などしないのである。今現在この後書きを書いている地域に上水道はないのだ。
しかし、ここに書かれた生活の断片はこれから徐々に崩壊を始めていくことになる。
煙草なんぞは部屋の中でスパスパ吸うようになるし、水も遂に妥協して水道水に変えてしまった。
これも大体はバイトの所為に出来る。バイトに行かなければ別に部屋の中でどれだけ煙草を吸おうが関係ないし、金がなくなった影響でミネラルウォーターを買うことなど出来なくなった。
こういう次第で、当時の私は「一杯の水」という救いを求めながら、そのまま頽廃の渦中に落ち込んで行ってしまった。
まったく、皮肉な話である。

 

 
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