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「小説」
千夜風灯物語

千夜風灯物語 第百三十六夜 白堊病棟

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肺を病んでこちら、ずっとこの白堊の病棟に暮らすうち、私の心にかつてあった黒い怪物は少しずつ少しずつ牙を殺がれ毛皮を剥がれ、今では亡骸となって横たわっているばかりです。怪物は私の命への執着であったようです。だから、今、私はとても素直に、死への階を登っています。

最後にしたためる文章とはどんなものかと思っています。いつか貴方に貰った螺鈿の宝箱、その中見に、この手紙を入れて、そうすれば、私はきっと羽化出来るでしょう。肉体を捨てた、重力の魔から解き放たれた、蝶となって、貴方の元へと飛んでも行けるでしょう。

白い病棟は、私の大切な生家、そこにあった白堊の庭園を思い起こさせます。美しい子どもだったというのは幻想で、その実私は、そこにいた貴方も、醜い、命を悪戯に肥大化させる芋虫でしかありませんでした。いい、思い出、と、言ってもいい、のでしょうか。

ベージュの風がカーテンを揺らしています。看護婦さんが命を弄ぶ音が聴こえます。末期の患者の喘鳴が聴こえます。白堊の床に、誰にも知られることなく私が落とした喀血の後が残っています。悲しいことは、何もありません。ただ、貴方がここにいない、二度とは会えずに私は逝く、それは――侘しい、ことです。

毒を撒き散らす赤い目の怪物が死んで、死を受け入れて、白骨を目指す我が身に残っているものが、侘しさだけだという事実は、けれど、何の感興も起こしはしません。せめて、せめて、と言うのなら、この手紙を……手紙とも呼べない走り書きをした一片の紙片を、螺鈿の宝箱に入れて、貴方に贈られるように遺言をしておきます。

だから、貴方は、この紙片を読んだら十七に紙切れに引き裂いてしまって、火をつけて、私の記憶と一緒に、焼き捨てて、そうして貴方の人生に回帰して行って下さい。

私のいない、日常へと。




 
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