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「小説」
千夜風灯物語

千夜風灯物語 第百二十七夜 Walking In My Sleep

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Cloudberry Jamの「Walking In My Sleep」を鼻歌で歌いながらリジイアは洗濯物を畳んでは箪笥にしまう、という行為を繰り返している。僕はアイロンをかけながらその歌を聴き、リジイアの忙しく動く様を見ていた。二人、言葉はなかったが、まあ、そういう休日もある。リジイアが歌を歌うのは、機嫌がいい時だけだから(機嫌が悪いのに歌う人もいないだろうが)今の彼女はとても機嫌がいいのだろう。それを感じる僕も随分ご機嫌だ。アイロンがけというこの世で最も注意深い退屈に浸りながら、リジイアが夏の間着ていた服に触れるのは心地がいい。勿論自分の服も自分でアイロンをかけているのだけれど。それは非常に孤独的な行為だった。ただ、僕が脇に積み上げた衣服を丁寧に畳んで箪笥に詰め込むリジイアがいるから僕の孤独は成就しない。幸福は何でもない一日にこそ感じられるべきものであって、今リジイアの美しい声でCloudberry Jamを聴く、それは、つまり、日常の一風景であると同時に、人生の幸福なる期間でもある。英語をよくするリジイアは三分間のこの曲を何度も何度も飽きることなく歌っている。本当に、飽きないのだろうか。飽きないんだろうな。僕が箪笥と僕の隣を行き来するリジイアを飽きることなく観察しているように、彼女も歌を歌うことに退屈しない。それだけでも、随分な幸福だ。

こんな具合で、僕たちの衣替えは粛々と進められた。




 
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