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「小説」
奈秤大英

奈秤戯言帳 其の一

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 奈秤戯言帳 其の一
手放さずが吉

お題:フニャフニャの恋

「おみくじ引きにいこうよ!」
 年末に彼女からそんなメールが届いた。
 僕は家で引きこもってるよりはましだろうと思い、すぐに行く旨を伝えた。
「じゃあ11時頃に神社で!」
 僕らの住む町には近くに神社があって、地元民は年明けすぐに、お参りすることが伝統らしい。
 彼女は生まれてからずっとそこの神社でお参りしていると言っていた。

 僕と彼女が合流すると、神社は人でごった返していた。
「人いっぱいいるねえ」
 震え声と一緒に飛び出した白い息が空に広がっていく。
 それにしてもこんなに人がいるのは意外だ。去年はもっと少なかったような?
「あー、ちょっと人多いかもね。でもここ、結構由緒正しいんだよ?」
 自信満々に彼女が明るい笑顔を浮かべて、誇らしげに言う。
 地元民としての意識があるのだろう。とてもかわいらしい、と思ってしまった。
 年明けから気分が晴れやかになるのはいいことだ。

 彼女との他愛ない会話をしていると、お参りの順番が回ってきた。
 二礼二拍手一礼。お願いは、まあ、想像にお任せしよう。

 最後に彼女とメインの目的であるおみくじを引いた。
 結果は中吉。彼女は小吉だった。

「あーん、ざんねん」
 それでもおみくじに書かれている内容は案外良かったように思う。
 対して僕のものときたら。
「ねえ、なんて書いてあったの?」
「秘密」
 僕はある一つの項目に目を向けていた。
 それは『恋愛』
 円満であることが書かれていた。
 僕はくすりとわらい、夜風でしおれたおみくじを結んだ。
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奈秤コメント:即興初作品にして、他のものに比べて良く書けた方だと思っている。
実際に友人と初詣に行っていたので、あっさりと書き始めることが出来た。
ちなみに友人は男の模様。彼女? いねえよ。
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籠絡の証

お題:とてつもないキス

事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだなと、僕は思った。

「吸血鬼だって?」
「その通り。ここは適度に暗く湿気ていて、居心地がいいからな。結構前からここにいる」
「へえ、そうなんだ」

僕は平静を装うことに全身全霊を込めていた。
落ち着け、クールになるんだ、こんなときこそ慌ててはいけない。

友達に誘われて、夏の最後の思い出づくりにと町はずれの朽ちた洋館で肝試しに来た結果がこの様だった。眼の前の幻想を必死に打ち消そうと頭の中では拒絶するも、残念ながら脳に焼き付いた記憶はちょっとのことではぬぐえないらしい。

正直な話、僕にとって吸血鬼かどうとか最早どうでも良かった。
なぜか。
それは吸血鬼と言った存在が目を見張るほどの美女だったからだ。
まさに絵に描いたような理想的な容姿が僕の眼の前にあった。その姿が僕の眼に飛び込んだ瞬間におそらく彼女の虜となってしまったのだろう。

「さあ、近くにおいで」

僕は抵抗せずに彼女の腕に抱かれた。

そして僕の唇は、血で口紅のように化粧された。
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奈秤コメント:確か時間がなくて随分焦って書いた記憶がある作品。
とてつもないキスってなんだよとか思いながら無理やり書いたせいで、
よく分からん作品になってしまった。……とてつもないかあ。
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あの頃に戻りたい

お題:灰色の作品

私は、私の全ての人生を掛けた末に、この子を創ることが出来たのだと確信している。
私の悲願でもある感情を持つロボットの開発。開発には永い年月と金はもちろんのこと、権力すらも必要になった。

 ――ヒトを創るなど神にでもなったつもりか!
 
耳にタコが出来るほど聞かされた言葉だ。
若気の至り、という言葉がぴったり当てはまるだろうか。ロボット製作の構想を同じ研究仲間に話して、そして失笑されたことを今でもよく覚えている。

 ――現実を見ろ。出来るはずがないだろう。

科学の発展は常に常識との戦いだ。ガリレオ・ガリレイが地動説を唱えたように、この世は思った以上に非常識だ。
科学者は非常識であるほうが丁度いい。

 ――またお仕事? ふーん……。

大丈夫。私の役目は終わり。もう満足だ。
これからはずっと家にいる。
だから……。

 『どうかされましたか、マスター?』

やはり<お父さん>と呼んでほしいな。
今度は目を離さないから、許しておくれ、私の娘よ。
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奈秤コメント:灰色→コンクリート→人工物という発想と、灰色→寂寥感→喪失感
という発想が組み合わさって、事故で失った娘をロボットとして蘇らせるという話を
二分ぐらいで思いついた作品。発想としてはありがちでなんとも言えない。
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空飛ぶカブトエビは何ゆえ昇天したのか

お題:意外な戦争

帰りの電車の中から窓を通して真っ青な空とぼんやりと広がる雲を何気なく見る。
その雲は、幼児が初めて粘土に触るかのように、自由に形を変えていった。

「カブトエビだ」

近くの少年がそう叫ぶ。
なるほど、確かにカブトエビに見えなくもない。
平べったく広がった円形の雲に尾が2つなびいている。
太陽に照らされた川を泳いでいるようだった。

私はカメラを取り出して、カブトエビ雲を撮った。
別に何か琴線に触れたわけでもないのだが、少し懐かしい気分に浸っていた。

その昔カブトエビを飼っていたことがあった。
川から捕まえてきたとかそういう類ではなく、売り物だった。
確か中学の自由研究にしようとしていたのだった。
それは卵から返すもので、うまく育てると約1ヶ月生きてくれる。
夏休みにはちょうど良かった。

だがこれが思いの外難しい。
一度に複数匹孵るとまず間違いなく共食いをする。
元気よく泳いでいると思えば翌日ころりと死んでいる。
思った以上に繊細な生き物で、何度も動揺し、泣きかけたものだった。

「あ、なくなちゃった」

少年の言葉を受けて窓の外を見やると、カブトエビ雲は霧散していた。
なぜかは分からないが、残念だ。

どんなモノであれど、カブトエビはこうも儚いものなのだ。
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奈秤コメント:百貨店でカブトエビ育成キットなるものを見かけたのが切欠で書いた作品。
しかもカブトエビは複数同時に育てると共食いするらしい。意外ですね。
ほら、お題に沿ってるからセーフ。断じてセーフ。
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燃費が悪い

お題:スポーツの船


ああ、疲れた。
ここ数年体を動かしていなかったせいか、もうボロボロだ。
最後に体を動かしたのはいつだったか。
おそらく高校生の体育の時間だったか。
交流の一貫とはいえフットサルの試合に参加したのは間違いだったのかもしれない。
それでも新卒社員の身分としては、色んな社内の人に会えるチャンスでもある。
交流はしたいけど、体を動かすのは億劫だなとそんな二律背反が頭をめぐる。
立っているのも辛くなり、グラウンドの芝生の上に腰を下ろした。

「大丈夫か? ほら、飲めよ」

いつの間にか近くに来ていた先輩社員がスポーツ飲料を僕に差し出した。

「いや、申し訳ないですよ。自分は大丈夫っス」
「いいから飲めって」

そこまで言うならと、僕は恐縮しながらもそれを受け取った。
わざわざ心配して持ってきてくれたのだろうか?
いい先輩だ。

一気に500mlペットボトルの半分ほどの量を飲む。
ふう、と一息ついて僕は先輩に尋ねた。

「この交流会結構しんどくないですか?」

インターバルはあれど、50分間ほとんど走りっぱなしだ。
それにもかかわらず、先輩はつかれている素振りを見せない。

「しんどいさ。俺も初めはめちゃくちゃしんどかったさ」
「ですよね」
「ま、要は慣れってやつだ。お前もいつか体良く動けるようになるさ」
「そうだといいんですけね」

そう言って僕は残りのスポーツ飲料を飲み干した。
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奈秤コメント:何も思いつかなかったからとりあえずスポーツ絡ませて書いたら、
中身が何も無い作品が出来て、自分にとっては逆に稀有な作品。
この作品で何か思うことがあったら、逆に教えて欲しいぐらい。
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