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「小説」
千夜風灯物語

千夜風灯物語 第六十三夜 ノーマン・ベイツ

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「あなたが私を捨てて、この家を出て行く、そんな夢を見ましたの」

紅茶を淹れながらリジイアは言った。僕は何も言わずにそれを聞いていた。ケムリと名付けた猫を撫で、朝刊に目を通す。

「でも、そんなことって、あるんでしょうか。なんだか絵空事にしか思えないのですけれど……」

僕の前に紅茶を出しながら、リジイアは答えを求めるように青い瞳で僕を見詰める。不思議な気持ちが僕の内から湧いて来る。リジイアは確かに人間でありながら、その瞳はまるで蛍の光を眺めるような、妙な色合いを持っていた。猫が僕の太腿をすり抜ける。

「別れ話を空想するような恋人たちは、添い遂げるモノだと言うよ」

僕はトーストに林檎ジャムを塗りながら答えた。実際の処、僕はそうしたいと願っているので、リジイアさえその気であればこの言葉は恐らく本当になるだろう。

「そうなんですの?」

リジイアもトーストを取りながら言う。東向きの窓から射し込む朝日が彼女の褐色の肌を照らす。そのか細すぎる指先にコンビーフを乗せたバターナイフを持って、ちょこんとトーストに乗せて、かじる。小動物的な可愛さが、一連の動作に潜んでいた。

「うん、そうだよ。そうやって僕らは生きて行く。それだけの人生は、きっと満ち足りている筈だよ」

僕の言葉に、リジイアは莞爾と微笑んだ。




 
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